ぼくのヒーローR2 第15話 きょうはんしゃ


室内に入った瞬間、驚きのあまり言葉を無くしたルルーシュとスザクは、それでも現状を理解しようと頭を働かせた。
このクラブハウスに住んでいるナナリーとメイドの咲世子。
来客はスザクとC.C.、そして本来此処の住人であるルルーシュ。
そして飛び込み参加のユーフェミア。
・・・6人だけのはずだった。

「あ、スザク君、来たわね。ふむふむふむふむ、話には聞いてたけど、ルルちゃん本当に小さくなっちゃったのね~」

にこにこと笑顔で近づいてきたのは・・・最悪なことに、ミレイだった。

「か、会長さん!?何でここに!?」
「かいちょう!?」

スザクの言葉で我に返ったルルーシュもまた驚きの声をあげた。

「いえーす!みんなの生徒会長、ミレイ・アッシュフォードでーす!って、なんなのよ!こ~んな面白い事になってたのに、何で私に一言も教えてくれなかったわけ?」

そう言いながら、ミレイは「えいえい、このっ」と言わんばかりにルルーシュのほっぺをつついたり、引っ張ったりした。ルルーシュは「ほわぁ!?」と素っ頓狂な悲鳴を上げながら首を振るが、それで止めるミレイでは無い。
ルルーシュの無言のSOSに、スザクはハッとなった。
ようやく泣きやんだのにまた泣いたら困ると、ルルーシュを護るように抱き直し、ミレイから離れるように移動した。

「止めてください」
「ちょっと~逃げなくてもいいじゃない」
「だめですよ!ルルーシュがまた泣いたらどうするんですか!」

ルルーシュに「ないしょ」と言われた事も忘れたスザクに、「すざく!ばかすざく!とりあたま!!」と、顔を真赤にしてスザクの胸をぽかぽかと叩いた。
ルルーシュの目元が赤い事はミレイとC.C.は気づいていたえていた。
ミレイとしては、それに気付かないふりをして、少しでも元気づけさせる意図があったのだが、逆効果だったとすぐに反省した・・・のだが。

「泣いた?ルルーシュがですか?ああこんなに顔がはれて・・・可哀想に・・・?」

悲しげな表情で駆け寄ってきたユーフェミアは、心配そうにルルーシュの顔を覗き込んだ。当然、そんな行為は逆効果。
ルルーシュは羞恥心から再び混乱してしまった。
幼い脳がパニックを起こした事に気がついたC.C.は、ユーフェミアの行動を遮ると、スザクをソファーへと促した。三人がけのソファーには既にナナリーが座っており、中央にルルーシュを抱いたスザク、その隣にC.C.が座った。そしてどこから持ってきたのか、C.C.は薄手の毛布をスザクごとルルーシュに掛け、その腕の中にいるルルーシュが周りから見えないようにした。

「落ち着くまこのままだ。ナナリーはルルーシュの手でも握っていろ」

ナナリーは、はいと返事をし、毛布に隠れたルルーシュの小さな手をぎゅっと握った。
三人が座ったソファーの前には一人掛けのソファーが二つあり、その一つにユーフェミアが座り、ミレイは横に立ったまま、どうして自分がいるのか説明した。

この学園は寮も敷地内にあるため、門限が過ぎれば正門は閉ざされる。バイトなどで夜に外出する際には、守衛のいる通用門で届出書にサインと生徒手帳の提示が必要なため、部外者が敷地内に入る事はない。
ルルーシュは記録を残さないために、ギアスで守衛を欺いていた。
部外者であるユーフェミアとダールトンは看守の元へ行き、副総督と皇女という身分を明かし正門を開けさせ、敷地内に車で入ってきていた。
皇女が軍人を連れてやってきたのだ。
責任者の耳に入らないはずがない。
今日は理事長であるルーベンもミレイの両親も不在で、皇女殿下がやってきたと守衛から連絡を受けたミレイが確認のためやってきたのだ。ユーフェミアが夜中に向かう場所など、死んだとされる兄妹の元以外ないから、何処かで二人の生存を知り、お忍びでやってきたのだろうと予想しクラブハウスに来たら大当たりだ。

ミレイの説明に、皇女が来たんだからアッシュフォードが動くのは当たり前だなと、スザクとルルーシュは納得したのだが。

「そんな話より、ルルーシュ大丈夫ですか?どこか痛いのですか?それならすぐにでも、医者を呼びましょう」

おろおろと、ユーフェミアは泣きそうな顔でルルーシュに声をかけた。
ルルーシュはびくりと震え、ますます小さくなりスザクにしがみつく。完全に、泣くのを我慢している状態だろう。
折角落ち着き始めたのに、まだ言うかこの娘は。
空気をよめ。
泣いた話は禁句だろうに。
主従揃ってKYとは残念すぎる。

「ルルーシュ、泣かないでください。スザク、すぐに主治医をここへ!・・・いえ、外にダールトンを待たせています。車ですぐに病院へ向かいましょう!」

心配で心配で仕方がないユーフェミアは、きっと体調が悪いのだ。すぐにでも医者に見せなければと、今にもダールトンの元へ走りだしそうだった。
ナナリーとC.C.が先ほど話した事は完全に飛んでいる。
その生存を誰にも言えないのだと言う話を。
命を狙われるのだと言う話を。
ああ、これは駄目だとC.C.は立ち上がった。

「ユーフェミア、お前は優しい子だよ。本当に、優しすぎて涙が出る。そんなお前に話があるから、ちょっとこっちへ来い。ミレイもだ」

同じく、表面上平静を装い内心イライラしていたミレイは、明るい笑顔で頷いた。

「今ですか?今はルルーシュの事を」
「いいから来い!」

C.C.は乱暴にユーフェミアの腕をつかみ、立ち上らせた。


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本来なら、目上の相手(継承権も上)が三人がけの長ソファーですが、今回はナナリーの足もあるし、ルルーシュを囲む形にしたかったのでユフィは一人がけソファー。

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